2021.01.18
営業戦略の立て方と戦術|BtoBビジネスの事例で見る立案ポイント紹介
営業戦略の立て方とその手順について、皆さんがご存知の企業事例をもとに紹介します。同時に弊社提供のフレームワークを用いて、戦略立案・戦術化で見事に業績を2倍以上拡大した器具メーカーの調査・分析・アプローチ手法を事例紹介します。
営業戦略が企業にとってどれほど重要であるかについて、有名企業の事例とともに弊社がフレームワークを提供し、大きな成果を収めた事例も紹介していきます。
市場には一社集約の法則というものがあります。たとえ各業界において競合企業が乱立しているとしても、数十年の年月を経て必ず一社に集約されるという事実です。淘汰されていくという事実です。
どこに集約されるかと言えば、トップシェアの会社に集約されます。
これは、これまでの市場での変遷の歴史が証拠です。
業界は歴史的に一社集約と分社を繰り返す事例を紹介
現在のアサヒビール、サッポロビールはもともと大日本麦酒という同じ会社であったということはご存知でしょうか。
アサヒビールの前身である大阪麦酒、恵比寿ビールを製造していた日本麦酒、サッポロビールの前身である札幌麦酒が合併して1906年に誕生したのが大日本麦酒です。合併により当時7割近いシェアを保持しています。
大日本麦酒はさらに翌年、東京麦酒を買収し、1933年には三ツ矢サイダーを製造販売していた日本麦酒鑛泉を、1943年には桜麦酒を合併しています。その後1949年に財閥解体の中、過度経済集中排除法の適用を受けて、朝日麦酒(現在のアサヒビール)と日本麦酒(現在のサッポロビール)に分社された歴史があります。西にアサヒ、東にサッポロとマーケットを二分されたと言われています。
同じような合併劇が現在も各業界、各市場にも起こっていないでしょうか。
食用油の業界も同様に、かつて十数社が乱立していました。しかし現在は、味の素、ホーネン、吉原製油、日華油脂という4社が合併しJ-オイルミルズとなり、日清オイリオ、ニッコー製油、リノール油脂が合併して日清オイリオグループになり、十数社が乱立していた業界が大手に集約され、現在では日清オイリオグループ、不二製油グループ、昭和産業、J-オイルミルズの大手4社がシェア争いをしています。
銀行業界も同様に1973年当時は、都市銀行というのは13行ありました。13行なのでBを文字って「BANKS」と称した都市銀行間のオンライン提携があり、取引をしていない都市銀行のATMでもキャッシュカードが使えるサービスがありました。
富士銀行、第一勧業銀行(A)
住友銀行、三井銀行、太陽神戸銀行(B)
三和銀行、三菱銀行、東海銀行、東京銀行(C)
大和銀行、協和銀行、埼玉銀行(D)
北海道拓殖銀行(E)
これがかつての都市銀行13行です。懐かしく感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ところが今やメガバンク3行を含め、大手4行に集約されています。
Aは現みずほ銀行、Bは現三井住友銀行、Cは現三菱UFJ銀行、Dは現りそな銀行・埼玉りそな銀行、Eは1997年に破綻しました。
こういった銀行業界再編の動きは、今や地方銀行に及んでいると耳にします。
生命保険業界、損害保険業界、製薬業界、ガソリンなどの原油製油業界においても同様に合併に次ぐ合併が進み、元の会社が何だったかすら思い出せない状況があります。
これらは市場原理で、数十年単位の長い年月をかけてシェアトップの1位企業に集約されていくということです。逆説的に言えば1位でなければ消えてゆく運命だということです。
ということは、企業が生き続けていくためには、1位でなければならないということです。どこで、何で1位になるか?その為の方法論が営業戦略だということです。
成功事例に学ぶ生き残る会社と消える会社の違い!営業戦略はどこで1位になるかの目標を立てる

業界最大手でもない限り、また中小企業においては、1位など程遠いと思われたかもしれません。
しかし、最大手でなく、中小企業であっても集約されずに生き残り、100年を超える歴史のある企業も多数存在しています。
生き延びる企業と消えてゆく企業の違いは何なのかということです。
それは、オールマイティーではなく、ごく限られた市場で1位を持っているかどうかの違いです。
例えば、全国で1位でなくても東京都多摩市で1位であればよいわけです。これが営業戦略上の最大の成功要因です。
事例として醤油業界ではどうでしょうか。
全国のみならず世界でもダントツのシェアを持つ1位のキッコーマンがですが、九州エリアで見ればキッコーマンは地元企業に歯が立ちません。
例えば大分県に行けばフンドーキンという九州1位の生産量を

誇る醤油メーカーがあります。フンドーキンは全国では8位の醤油メーカーですが、地元九州では圧倒的なシェアを誇り、全国1位のキッコーマンですら九州エリアでは2桁のシェアを保持できていないといわれています。
九州エリアのシェア獲得のためかどうかはわかりませんが、キッコーマンは2017年に「いつでも新鮮 九州うまくちまろやかしょうゆ」という、九州エリア限定商品まで発売しています。九州エリアのシェア拡大に向けた商品だったのかも知れません。
つまり、どこで1位を確保するか。この1位をどれだけ重ねるかが生き残る企業と消える企業の違いです。
フンドーキンは、醤油メーカーとして150年以上の歴史がありながら、味噌、ドレッシング、調味料と商品の幅を広げ、醤油だけでなく味噌、ドレッシング、ポン酢、柚子こしょうでも九州1位の生産量を誇っています。
(写真出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
1位を重ねるということは、何も九州というエリアだけではなく販売ルートでも1位であればいいわけですし、ある商品で1位でもいいわけです。フンドーキンのように。この1位が重なれば重なるほど、1位の獲得分野が多ければ多いほど盤石な経営が実現するということです。
営業戦略というのは、どこで1位になるかを考えることであり、シェアというデータを分析することで、1位になりやすいエリア、1位になりやすいチャネル、1位になりやすい商品を探し出し、そこに営業戦力を集中させることなのです。
しかし、1位を狙うには当然のことながら中長期的な視野が必要になります。そして、その足掛かりとなるのが11%のシェアだと思ってください。このシェアは1位になるための絶対条件です。
これまでの営業コンサルティング活動の中で、過去のデータから言いましても、このシェアに到達していない分野での戦略構築は効果的ではないといえます。
シェアデータを収集・分析し、まずはシェアの高い分野、そして少なくとも11%程度のシェアを確保している分野をターゲットに、具体的な戦略を立てることがポイントです。
プレモルの人気は攻略エリア計画の緻密さにあった
ビール事業参入から45年間赤字だったサントリーは、2008年にビール事業黒字化に成功し、国内シェアも12.4%まで引き上げサッポロビールを抜きビール業界3位にまでなりました。
この躍進の裏には、徹底したエリア戦略が垣間見えます。
サントリーはエリア戦略を世界でも活用しています。それは中国への進出に見られます。
サントリーの中国進出は、1984年に始まります。あの広大な中国の国土を総花的に攻略するのではなく、活動エリアを上海に設定し、このエリア限定で70%ともいわれる圧倒的なシェアを達成しています。市場を総花的に攻めていたら、中国での成功はなかったとも言われています。同じやり方を実はサントリーは国内でも行っています。
ご存知の通り、プレミアムモルツはプレミアムビールの中で確固たる地位を築きましたが、これが国内3位躍進の原動力になったのは事実です。では、プレモルがここまで市場から支持されるようになったのはなぜでしょうか。
矢沢永吉や竹内結子のプロモーション効果もあったとは思いますが、これは表面上のことで、根底にあったのはサントリーお得意のエリア戦略営業です。プレモルの営業エリアを絞りに絞ったということです。
最初のターゲットエリアは、日本一の歓楽街、銀座です。
酒類メーカーはどこもそうですが、一般消費者よりも飲食店での流通を優先します。なぜならば、販促効果が高いというのが理由です。飲食店で味わったあの味を求めて個人消費が誘発されるからです。入手困難な日本酒や焼酎も必ずと言っていいほど、飲食店を最優先に流通させます。
プレモルも銀座の飲食店を徹底して攻略しました。競合他社のビールを提供している飲食店攻略です。ある意味どぶ板営業です。一軒一軒訪問営業です。時には顧客獲得のために、トップまで駆り出しての営業活動もあったと言われています。
この銀座で一定の営業成果を収め、次に攻略したのが六本木と言われています。六本木でも同じ営業手法です。
こういった地道な営業活動の積み重ねで、ビール事業の黒字化、そして業界3位のシェアまでに至っています。
つまり、どこで一番になるのかという戦略目標が重要ということです。
どこで1位になるのかです。
全国で1位なのか
関東・関西で1位なのか
東京都内・大阪府内で1位なのか
品川区・大阪市で1位なのか
どこで1位を目指すのかということです。
この考え方は、市場における自社の優位性を確固たるものにするマーケティング手法です。
ホームセンターチャネルを攻略して圧倒的シェアを達成した戦略立案手順と戦術の具体例
ここからは、実際に弊社が提供しているフレームワークを活用し、特定の販売チャネルで圧倒的シェアを手に入れた器具メーカーの事例を紹介します。
この会社は歴史も古く、現在四代目社長のオーナー企業です。
・売上23億前後(直近5年減少傾向)
・創業当時から同じ商品を製造(アイテムは増加)
・4つの販売チャネルあり
・従業員数92名(営業担当者21名)
・小さい市場ながらシェアはトップクラス
・流通は一次卸→二次卸→小売店を経由してエンドユーザー
この企業の課題は、売上が減少傾向にあることです。そして営業活動上のもう一つの課題は、メーカーであるがゆえに一次卸にしか営業をかけていないことでした。既存取引先へのルート営業のみで、新規顧客開拓など皆無という状況。つまり、一次卸先以降の商流経路が見えていないということです。
営業の原理原則は、たとえメーカー企業であっても川下営業に徹することです。つまり、エンドユーザーに一番近いところに営業をかけるということ。いくら一次卸に営業をかけても、一番エンドユーザーに近い小売店からの発注がない限り、二次卸、一次卸には発注は来ません。つまり一次卸への営業だけでは、営業しているようで、営業活動になっていないのです。
この状況下で行ったことは、既存の販売チャネルの市場規模の推移と各販売チャネルの一次卸先以降の商流経路の見える化です。
この調査・整理から見えてきたことは、既存販売チャネルの市場規模は確実に縮小しており、その縮小度合いと同じく売上も縮小しているということ。そして市場拡大している販売チャネルが皆無だということです。
そこで、この器具メーカーの商品で、新たな販売チャネルが開拓できないか、同時に市場規模が拡大している販売チャネルはないかと調査したところ、一つだけありました。ホームセンターという販売チャネルです。
現在ドラッグストア市場は約8兆円と拡大の勢いが止まりませんが、当時ホームセンターも同じ状況にありました。このホームセンターというチャネルを開拓せずして、この先はないというコンセンサスのもと、営業戦略立案がスタートしました。
と言っても全くホームセンターでの販売実績がなかったわけではなく、既に二次卸経由で納入されていることも先ほどの見える化した商流経路から把握できていました。しかし、全くホームセンターへの川下営業はしていなかったのです。
営業戦略立案には、これまでお伝えしてきたようにシェアデータが必要です。しかし、この器具メーカーも戦略立案に必要なシェアデータを持ち合わせていません。そこでどうしたか?
まずホームセンターが国内に何店舗存在し、どういったチェーン店があり、各チェーンの売上規模がどれくらいなのかを一覧しました。
当時、全国に営業対象となるホームセンターを運営している企業は216あり、売上規模の多い順に並べるとカインズ、コーナン、ケーヨー、ナフコ、コメリ・・・となっていました。(現在は再編が進んでいますが、当時はこういった売上規模順でした)
まだそのホームセンターのバイヤーとの接点もない中で、面談してシェアを教えてくれるものでもなく、ましてやバイヤーの業務責任上、そういった情報を開示してくれることは全く期待できません。
そこでシェアデータは、全て調査をして収集しました。シェア調査は営業担当者が自ら足を運んで行いますが、全店舗を対象に実施するわけにもいきません。しかも営業担当者は21名です。そこで、各チェーン店の標準店のみを調査対象としました。一般的に小売りチェーンには、標準店という基準となる店舗があり、その店舗でレイアウトや陳列方法など新たな試みをテストする店舗があります。この標準店の調査を行いました。
この企業の商品は、ホームセンターでは上部に穴をあけられた台紙という厚紙に貼り付けて販売されています。売場では、その台紙に貼り付けた商品をフックという棒に引っ掛けて販売しています。そこで標準店の売場に赴き、自社と競合他社の合計で何フェイス販売されているか、その中で自社が何フェイスで、競合A社が何フェイスで、競合B社・・・はどうかというデータを収集してきたわけです。この調査方法は日用品などのメーカーでよく実施されている方法です。
その結果、カバー率32.5%、A・1率15.5%で、標的シェアが24.0%であることが判明しました。そこで今後5年以内に標的シェア50%にする計画を立てるとともにアクション計画策定しました。つまり、標的シェア50%を達成するために効果的なターゲットリストの作成を行ったのです。
カバー率、A・1率、標的シェア、シェアアップ・売上アップに効果的な顧客ターゲットについてはコチラ
その結果、2年前倒しのわずか3年で目標の標的シェア50%を達成し、ホームセンターでのシェアトップに躍り出ました。
それから業界の再編がすさまじい勢いで進み、当時トップシェアを確保していたこの会社のシェアは、勝手にシェアがさらにアップしました。これは、業界の再編、統合が進めば進むほど、トップシェアの商品は知名度があるわけですから、絶対に売場から外すわけにはいかない重用される商品として扱われるようになります。トップシェアであるがゆえにその恩恵を受けました。
この企業は現在、M&Aなどを仕掛けながらこの十数年で、売上規模が2倍以上になっています。
営業戦略の事例 まとめ
ものごとに基礎・基本があるのと同じように、戦略にも基本理論と基礎のフレームワークというのがあります。これさえ組織として共有すれば、営業担当者は自ら考え、自ら行動を起こし、今回紹介した事例のように大きな成果を残すことになります。
営業戦略の極意は、
・現状の立ち位置を把握することと
・1位になれそうな分野をシェアデータから抽出すること
・重点化する分野で売上・シェアアップに効果的なターゲットリストを作成すること
これだけです。
これさえ営業組織で共有できれば、各営業所、各営業部署単位で担当エリアの攻略すべき分野、攻略すべき先の意思決定と優先順位を自ら立案できるようになります。
これまでの営業活動の延長線に不安をお感じならば、行動を起こすことをお勧めします。
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