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2023.06.13

3営業戦略立て方のポイントはこの3つ!効果的な立案方法を紹介

 岩月

営業戦略の立て方について、戦術化した事例を紹介しながら重要なポイントを解説します。何をもとに?どのような分析をして?その分析のために必要なデータは何で?分析結果をどう組み合わせれば即効性のある戦略となるのか?その戦略立案の具体的手法です。

営業戦略のフレームワークでは、一番効果的な3つのポイント

①重点エリアの設定

②重点販売チャネルの設定

③シェアアップターゲティングの設定

の基本的な考え方についてお伝えしました。

営業戦略のフレームワーク はコチラ

 

ここでは、現状の営業組織の課題を踏まえ、目標を達成するための具体的な戦略の立て方を

市場シェアデータからマーケティング視点で考える方法を解説します。

シェアという客観的データを活用し、科学的なアプローチを行うことで

効率的営業を可能にし、目標達成を容易に実現する営業組織に変身できます。

担当者は営業戦略の立て方を考える状況にあるか?

皆さんの会社では、営業担当者が自ら考え、目標に向かって自ら行動する状況にあるでしょうか?
もしそうでないとすれば、これからお伝えする内容を営業組織の運営を見直すきっかけとしてください。

営業担当者が自ら考えるようになるためには、知識の付与が必要です。

基礎のないところに建物が建たないように、知識のベースがないところに思考は生まれません。

では営業戦略立案にどういう知識が必要かと言えば、体系だった戦略理論です。

目標に向かって自ら行動するには、組織共通の考え方、共通の判断基軸にもとづいて自らの意思決定をさせることです。自らの意思決定ですから当然納得できます。ですから自ら行動するのです。

知識の付与は、営業組織全体への教育で解決できる課題です。

組織共通の考え方、共通の判断基軸というのが方針であり、その方針に則って戦略があり、

具体的現場活動として戦術に落とし込まれます。

営業戦略の立て方は、営業幹部や企画部門が発信すればよいものではありません。

それでは、営業担当者にとっては、自ら考えずに受け身の行動にしかならないからです。

営業幹部や企画部門が提示すべきは、基本的な方針であり、戦略を立てる業務は、

現場を任されている営業拠点責任者と担当者に任せるのが成功のカギです。

なぜならば、それぞれの営業拠点ごとに地域性やこれまでの歴史の中での取引上の諸事情が異なるからです。

つまり上層部やスタッフ部門から提示すべきことは、組織共通の考え方、共通の判断基軸だということです。

もしも皆さんの会社が方針無し、戦略無し、戦術無しの状態だとしたら、営業の衰退はまもなく

売上やシェアといった数値や営業担当者の流出といった現象であらわになると思われます。

これでは目標達成どころではありません。

組織に勢いをつけるには、

どんな企業を目指すのかというビジョンの設定、

何を基準に営業活動を行うのかという明確な方針の打ち出し、

目標数字達成のための具体的な戦略の立て方、

現場戦術への落とし込み方

を全営業に明らかにし、そのための教育を施すことが急務です。

営業戦略の立て方3つのポイント!競合企業に差をつける分析手法と組み合せの方法

前述のとおり、ここではすぐに営業活動改善につながる重要な3つの分析と設定方法について解説します。

・重点エリアの設定

・重点販売チャネルの設定

・シェアアップターゲティングの設定

営業戦略の立て方①:重点エリアの設定の目的と手順

まず初めに、ビール業界におけるサントリーを事例にエリア戦略の重要性をお伝えします。

ビール事業参入から45年間赤字だったサントリーは、2008年にビール事業黒字化に成功し、

国内シェアも12.4%まで引き上げ、サッポロビールを抜きビール業界3位にまでなりました。

この国内での躍進の裏には、中国で培った徹底したエリア戦略が垣間見えます。

中国でのサントリーの躍進を事例に説明します。

サントリーの中国進出は、1984年の江蘇三得利食品有限公司(サントリーは中国では「三得利」と表示)

の設立に始まります。

〈サントリー中国進出の歴史〉

サントリーは、 中国市場での足掛かりを江蘇省の連雲港市にもとめ、ここで衛生管理、従業員の意識改革、原材料調達などビール事業のノウハウを培ったと言います。

その後、1996年に大都市上海に上海三得利啤酒有限公司を設立し、攻略エリアを上海に限定しました。

この上海の地で二次卸110社を組織化すると同時に、上海中心街をエリア区分して卸の専売エリアを設定し、小売店へ直販させることで、ブランド別ビール販売量でシェア第 1 位を獲得しています。

上海でのサントリーのシェアは70%ともいわれ、圧倒的なシェアを誇っています。

あの広大な中国の国土です。

市場を総花的に攻めていたら、今のサントリーの中国での成功はなかったと言われています。

広大な土地の中で、営業地域を狭めてこれを重点エリアと設定し、その重点エリアだけに

営業力を集中したわけです。同じやり方を実は国内でもサントリーは行っています。

矢沢永吉や竹内結子のプロモーション効果だけではありません。まさにどぶ板営業の勝利です。

国内でのエリア戦略の展開事例はコチラをご覧ください。

営業戦略の立て方と戦術事例 はコチラ

 

ではここから具体的に、日本国内でのエリア設定と分析のやり方を説明していきます。

通常全国を8~9ブロックに分割し、更に各ブロックを

都道府県ごとに分割し、どの県から攻略すれば効果的かを分析します。事業規模によっては、各都道府県内を5~6エリアに区分し、攻略優先順位を明確にしていきます。

その為にまずは現状把握です。把握すべきデータはシェアです。

BtoBビジネスの場合は、該当商品(サントリーの事例のようにビールならばビールという商品)について、取引先ごとの競合他社を含めた取引量全体数量を把握します。(この数量を「胃袋」と呼んでいます) 

つまり、各取引先がどれだけの購買力があるかを自社のみならず、競合他社の購買量も含めて調査します。

それと同時に、自社及び各競合他社の納入量の把握です。

取引先の胃袋と自社を含めた各社の取引量から、客内シェア(各競合取引量/胃袋)がわかります。

このデータを前出の設定エリアごとに集計していきます。

そうするとエリアごとに自社を含めた優劣がシェアという数字で把握できます。

エリアごとの集計数値を次の方法で分析します。

・各エリアでの順位

・目標とする順位

・一つシェアが低い競合名

・目標とする順位到達までに必要なシェア

これらがわかれば、おのずと攻略エリアの優先順位が分析できるようになります。

サントリーのようにどこで一番を目指すのか。これは戦略上きわめて重要な考え方です。

営業戦略の立て方②:重点販売チャネル3つの考え方

どの販売チャネル・ルートを攻めるのが効率的か?その考え方の基軸についてお話しします。

多くの製品がラインナップされ、全国展開している場合であっても、

全方位的な戦略を構築することは現実的ではありません。

製品ニーズは、法律の改正への対応といった時流製品や画期的な新技術製品などがありますが、

特にBtoBビジネスの場合は、製品を基軸に販売チャネル・ルートを設定するのが現実的です。

販売チャネル・ルートの考え方には、大きく3つ考えられます。

①どの業種に特化して販売攻勢をかけるのか

②一次卸、二次卸、小売店という流通段階のどこに強化して販売を仕掛けるのか

③どの業界の流通ルートに特化して販売を仕掛けるのか

 ということを設定することです。

 

①の業種特化ですが、例えば同じ製品であっても、菓子メーカー、冷凍食品メーカー、食肉加工メーカーなど

いろいろな業種で使用される製品の場合、どの業種にターゲットを絞るのかということです。

 

②の流通段階というのは、通常メーカーを川上、エンドユーザーに一番近い販売業者を川下といいますが、

この川上から川下までの流通経路には、一次卸、二次卸、小売店というように段階があります。

 

通常メーカーの場合は、一次卸にしか営業活動を行っていないケースが見られますが、

いくら一次卸に営業活動を行っても、縮小市場では商流は起こりません。

例えメーカーであっても川下、つまりエンドユーザーに一番近いところに営業をかけない限り、

商流は起きません。

もしも、自社の製品がどういった流通ルートを通じて消費者の手にわたっているのかが不明の場合は、

自社からどの一次卸を通じて、どの二次卸に製品が渡り、どの小売店を通じてエンドユーザーの手元に

わたっているかという商流マップを作成することをお勧めします。

この商流マップを明らかにすることで、その商流に則ってそれぞれどれくらいの商品取引があるのかを

金額ベースで積算します。

そして一番取引額の多い川下の小売店を起点に商流を遡ってそのルートの販売を強化するという方法がとられます。

 

③の業界の流通ルートの特化ですが、同じ製品であってもこの卸ルートに販売すれば特定の業界にのみ

販売されるというようにその流通ルートによって使用業界が確定しているケースです。

例えば工具メーカーの場合、ホームセンタールート、金物ルート、電材ルート、機工ルートというように

これらの流通ルートが決まれば、どの業界に販売されるかが確定されます。

①②③いずれにせよ、それぞれの販売チャネル・ルートの取引ボリュームを数字で把握します。

そして各販売チャネル・ルートをエリア分析と同じ考え方で重点化すべき販売チャネル・ルートを抽出します。

・各チャネルでの順位

・目標とする順位

・一つシェアが低い競合名

・目標とする順位到達までに必要なシェア

 これらがわかれば、おのずと重点販売チャネル・ルートの優先順位が分析できるようになります。

営業戦略の立て方③:シェアにも2つある!シェアの定義とシェアアップに効果的な顧客ターゲティングの把握法

シェアは市場におけるその企業の存在価値を示しています。売上にも大きな影響を与えます。

そこで、自社の売上・シェアをアップさせるのに効果的な顧客はどこか?その考え方をお話しします。

一般的にいうシェアは、「実績シェア」と言って、自社の

販売額を総需要(市場規模)で割って表します。日頃使用しているシェアというのはこの実績シェアです。

この「実績シェア」は市場における自社のポジショニングやエリア戦略や販売チャネル戦略を構築する際に貴重なデータですが、シェアアップ戦略構築には使いません。

なぜならば、実績シェアだけではシェアアップための方策が見いだせないからです。

年度方針会議などで“シェアアップ〇%を目指します”などという計画発表がありますが、

“具体的にどうやってシェアアップを実現するのか”というところには言及されません。

なぜならば、シェアアップのための方法論を知らないからです。

ではどうすればシェアアップが実現できるかですが、それにはシェアアップに効果的なお客様を

明確にすることです。

具体的にどのお客様をターゲットにするのかを明らかにするということです。

その為に「標的シェア」という指標を使用します。

「標的シェア」というのは、シェアアップ戦略を構築するときのみに使用する指標で、

この時以外は通常の「実績シェア」のことをシェアと言っています。

「標的シェア」というのは次の算式で表現されます。

カバー率という要素とA・1率という二つの要素を合計して2で割ると算出できます。

では、カバー率から説明していきましょう。

【カバー率】とは、現在取引があろうがなかろうが、ターゲットにしているリストの中で、

現在すでにお取引のある先をリストアップし、全営業対象先(リストの総件数)の中で

何件お取引があるのかということです。

算式にすると、

既存取引先数÷全営業対象先数

ということです。

これまでにも何度も申してきましたが、この分析はターゲットが定義され、

リスト化されているからできることなのです。

すべては顧客ターゲティングから戦略は始まります。

 

「標的シェア」のもう一つの要素であるA・1率について説明します。

A・1には2つの意味あり、AはABC分析のAで、「1」は既存顧客の中で客内シェアが

競合他社と比較して圧倒的なシェア格差を持っている先のことを言います。

圧倒的なシェア格差というのは、客内シェアにおいて競合他社の客内シェアと比較し、

3倍以上の差をつけていることを言います。

ABC分析というのは、ターゲットの中で胃袋(購買規模・仕入規模)の多い順に一覧化し、

ターゲット全体の胃袋に占める構成比を算出して、

その構成比を累積して累積構成比が70%まで入る先をA、95%まで入る先をB、残りをCとする分析のことです。

つまり、【A・1率】というのは、

ターゲットの胃袋をABC分析し、そのAランクの顧客の中で客内シェアが競合他社と比べて

3倍以上の圧倒的なシェアを持っている割合のことです。

これを1位ですので「1」と表現しています。

算式にすると

ABC分析のAグループの中で客内シェアが圧倒的に高い先数÷ABC分析のAグループの先数

ということです。

〈標的シェアでシェアアップに効果的なターゲットリストが出来上がる〉

これで現状の「標的シェア」というのが算出されます。

例えば現状の「標的シェア」が20%としましょう。

この「標的シェア」を3年後には25%にしたいと目標値化したとします。

つまり3年で5%のシェアアップです。

では5%のシェアアップのためにどうするのかという具体策が必要です。

この5%シェアアップのためにどの先をターゲットにすれば効果的かという具体化の事例をお伝えします。

 

今仮にとある業界を分析した結果、全営業対象先数が500軒あるとします。

その中で既に取引がある先数は150軒であったとすると、

カバー率:150軒÷500軒=30%

となります。

一方A・1率は、ABC分析の結果Aグループ数が40軒、

そのAグループの中で競合他社と比較してシェアが3倍以上の差をつけている先が4件あるとすると、

A・1率:4軒÷40軒=10%

となります。

よって、現在の標的シェアは、(カバー率+A・1率)÷2 ですから、(30%+10%)÷2となり20%です。

現状20%の標的シェアを5%アップの25%にしたいという戦略目標を立てた場合、

A案、B案、C案の3パターンの計画案を考えたとします。

資料をご覧ください。

A案:カバー率だけをあげてシェアを5%アップさせる

B案:A・1率だけをあげてシェアを5%アップさせる

C案:カバー率、A・1率それぞれ同じだけあげてシェアを5%アップさせる

では資料の下の表から見ていきましょう。

A案では現状30%のカバー率を10%アップの40%にすることで標的シェア25%が達成できます。

カバー率を10%アップさせるということは、全営業対象先数が500軒ある中で10%分の新規顧客を獲得する必要がありますから500軒×10%で50軒の新規顧客開拓が必要となります。

ではこの50軒開拓のターゲットとなるのはどこかと言えば、先ほどのABC分析の中の上位Aグループから順に、未取引先を上位からピックアップすればアプローチリストが出来上がります。

B案では現状10%のA・1率を10%アップの20%にする必要がありますから、

Aグループ先数40軒のなかで客内シェア3倍以上の格差をつけている「1」の先を10%分獲得すればよい

わけですから、40軒×10%で新たに4件の「1」先を獲得すればよいわけです。

これもカバー率と同様にリスト化できます。

通常の「実績シェア」では、5%シェアアップのための方策が出てきません。

しかし、「標的シェア」では5%アップのために

・取引のまだない先の中で、どの先を開拓すれば効率的にシェアが上がるか

・既存取引先の中でどの顧客をターゲットにし、どういった状態にすれば効率的にシェアが上がるか

というシェアアップのための開拓見込みリストが出来上がるということです。

つまり

・新規開拓先ターゲットリスト

・既存顧客深耕先ターゲットリスト

が出来上がります。このリスト化された先を徹底的に攻略すれば、確実にシェアは向上します。

つまり営業戦略は、現場で具体的に活用されなければ意味がないというのはこういうことです。

戦術への昇華:3つの戦略目標を組み合わせる!エリア×チャネル×シェアアップターゲティング

ここまで、重点エリアの設定、重点販売チャネルの設定、シェアアップターゲティングの設定と
説明してきましたが、これらの戦略目標を一本櫛で一気通貫したものにすることで、
一気に即効性が高まります。

つまり、それぞれの戦略目標を単独で活用するのではなく、

重点エリアの設定 × シェアアップターゲティングの設定   ・・・A

重点販売チャネルの設定 × シェアアップターゲティングの設定・・・B

の掛け合わせをすると、即効性が得られます。これは絶対的な法則です。

A:重点エリアの中でシェアアップターゲティング顧客を重点的に営業する。

B:重点販売チャネルの中でシェアアップターゲティング顧客を重点的に営業する。

これで非常に即効性の高い戦術に昇華するわけです。

30年近い営業指導経験から、実直にこのターゲットリストにもとづいた営業活動をしている会社は、

確実にシェアアップに成功するとともに、売上の向上も実現しています。もちろん目標達成もしています。

シェアは一年や二年で急激にアップするものではありません。

あのトヨタ自動車ですら30%から40%のシェアに到達するまでに8年かかったといわれています。

ですので、中期3年をターゲット期間として設定すべきです。

ここまでで、戦略とはどういったものなのか、現場で実践活用できる戦略とは、

戦術に落とし込むとはどういうことなのかがご理解頂けたと思います。

戦略・戦術は難しいものではありません。

正しい知識を得て、基本的な考え方さえ間違わなければ、

現場の営業担当者で構築できる強力な営業ツールになります。

そして、こういった知識が自ら考え、自ら行動を起こす組織活性の原動力になります。

こういった戦略の考え方は、どんな業界、どんな業種でも活用可能です。

戦略を導入することで、経営上の大きなメリットをもたらすことはあっても、マイナスはありません。

未導入の企業様は、ただこれまで戦略というものに意識が向いていなかっただけではないでしょうか。

今後のビジネス展開においてツールになります。ぜひ自社への導入を検討してみてください。

 

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著者:岩月康隆 目標達成営業コンサルタント
   有限会社アクチャーコンサルティング 代表取締役

BtoBビジネスにおける営業目標を恒常的に達成する『仕組み』構築の専門家。これまでコンサルティング指導先として約320社、受講後アンケートの結果次第では再登壇が困難と言われている企業研修講師・銀行シンクタンクのセミナー講師では、2005年以来連続で登壇するなど約1200件の指導実績がある。

 

 

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