2023.06.09
1売上目標の正しい立て方と魔法のテンプレート|営業利益目標達成
「来期は8%アップで」といった、どんぶり勘定の売上目標では、営業担当者のモチベーションはダウンしてしまいます。経営には売上だけではなく、利益確保も重要です。確実に営業利益を確保する目標設定のポイントを魔法のテンプレートを使用して解説します。
売上目標の設定のための分析項目と営業利益設定のポイント
・何を基準に営業の売上目標を設定すればよいのか?
・各部署、各担当者への割り振りの仕方は?
・目標設定は売上だけでいいのか?
新年度を迎える前、毎年のことですが恒例の予算作成に違和感のある方も多いと思います。
「来期は前年対比+8%で」といった、なんら根拠を持たない売上計画が設定され、
さらに“どうすれば目標達成できるか”というアクションプランに落とし込まずに
計画づくりを終えている企業が多いのが実態です。
これはあってはならない売上目標の設定の仕方です。
今、企業および営業の価値を示すのは売上だけではなく、限られた経営資源をもとに
いかに効率的に利益を上げるかということです。
そして、会社として設定された目標数字を各部署、各担当者へどのように割り振ればよいのか、
やらされ感でいっぱいのモチベーションダウンにならないようにするにはどうすればよいのか、、、
いつも悩むところです。
その売上目標を達成するためにどんなアクションを起こす必要があるのか。
そのアクションの指標となるものは何なのか。
これをKPI(重要業績評価指標)と言い、行動の到達レベルを示す指標です。
ここまで設定しなければ、売上目標を設定する意味がありません。
そしていくらの営業利益を確保するのかという利益レベルまで目標設定が必要です。
売上目標の設定には、前年対比の目標設定ではなく、“労働生産性”という指標を用いて設定します。
売上目標の各部署、各担当者への割り振りは、“成長寄与率”という指標を活用します。
KPIは会社、営業部門全体の方針によって変化しますが、
顧客数(新規顧客数・ロスト顧客数)
案件化率
決定率
案件単価
月間訪問軒数
などを設定しているケースが多いです。
そこで、営業目標設定に必要な営業視点での財務知識について、お伝えしていきます。
営業目標数字設定に必要な8つの指標
営業目標設定に必要な知識は次の8つの指標です。
①労働生産性
②粗利率
③変動比率
④損益分岐点比率
⑤労働分配率
⑥限界利益
⑦成長寄与率
⑧営業利益
売上目標の設定には、弊社が提供する「魔法のテンプレート」
と呼んでいるシートを使います。
わずか8つの指標の算出方法や意味が理解できていれば売上、営業利益目標の設定は誰でもできるようになります。
知識としては上記の8つで大丈夫ですが、データとして少なくとも過去3期分の①~⑦のデータの把握は必要になります。
わずかこの8つの指標だけなのですが、この算出方法や意味を理解するには財務知識が必要になります。
①労働生産性:これは一人当たりの粗利額のこと。(粗利額÷人員数)
②粗利率:売上額に対する粗利額の割合。(粗利額÷売上額)
③変動比率:売上額に対する変動費額の割合。(変動費÷売上額)変動費とは何なのかという知識が必要です。
④損益分岐点比率:売上額に対する損益分岐点売上額の割合。(損益分岐点売上額÷売上額)損益分岐点売上額の算出方法の知識が必要です。変動費、固定費の意味合いを理解する必要があります。
⑤労働分配率:粗利額の中に占める人件費額の割合。(人件費額÷粗利額)
⑥限界利益:売上額から変動費額を控除したもの。(売上額-変動費額)この限界利益は固定費と利益の総額であることを理解する必要があります。
⑦成長寄与率:会社全体の伸びにどれくらいの貢献度があったかをあらわしたもの。(売上伸び率×前年売上構成比)
⑧営業利益:売上-原価=売上総利益-販管費=営業利益の構造を理解する必要があります。
文字にしてしまえば簡単なのですが、これら8つの指標の理解に至ろうと思えば、財務知識は欠かせません。
しかし、ここまでの知識は目標数字設定・実践研修という研修を受講すれば、わずか2日間で習得できます。
売上目標や営業利益目標は、数字を作りことが目的ではなく、
その数字や成り立ち意味を理解することでKPIを見出すことが出来、
その達成のための営業行動計画に結びつかなければ、数字遊びで終わってしまします。
目標設定は、その目標達成のための営業アクションを明確にするためのものであるということです。
目標達成のために何をするかです!
この目標数字の設定後、目標達成のための行動計画策定に企業内営業研修では2日間を要します。
これは、自社の営業各部署を自活させるための方法論です。
ここからは「魔法のテンプレート」について、気になった方もいらっしゃると思いますので、
その概要についてお伝えします。
誰でも正しい売上・利益目標が算出できる「魔法のテンプレート」
これがその「魔法のテンプレート」です。正式名は「年度目標予算計画書」です。
シートの項目をご覧になって、前号でお伝えした8つの指標が必要なのがご理解いただけると思います。
《売上目標の算出根拠を明確にする公式》
こういった経験はありませんでしょうか。
「人手が足りません、ですので人員2名の増加をお願いします。」
この時代、人手不足はどこに行っても耳にします。
人手が不足しているのは事実でしょう。しかし、2名の人員を増加することによっていくら売上を増加させるつもりなのでしょうか?
経営はある意味、投資とリターンの効率勝負をしているのです。
2名の人員に投資するならば、リターンとしてどれだけの売上、利益の向上を見込むのかを
明確にする必要があります。これが経営意識です。
売上目標も同じ考え方です。
この算式を見てください。これが売上目標の算出式です。
まずは、算出式の分子を見てください。
目標設定された労働生産性に増員を含めた予定人員数掛け合わせます。
労働生産性は1人当たりの粗利額です。これに予定人員数を掛け合わしますから、
分子は目標総粗利額を意味しています。
今度は分母を見てください。分母は目標付加価値率となっています。
付加価値額というのは売上額から原価を控除した金額を言います。
ですので、ここでは付加価値額は粗利額と同じととらえてください。
算式の分母は目標付加価値率となっていますので、目標粗利率と読み替えてください。
ということは、分子が目標総粗利額、分母が目標粗利率ですから、
目標総粗利額÷目標粗利率=目標売上
となります。
つまり、人員数が増加すれば自ずと目標とする粗利額が増加しますから自ずと目標売上額も増加し、
人員数が減少すれば自ずと目標売上額も減少します。
目標粗利率を低くすれば目標売上額は増加し、目標粗利率が上昇すれば目標売上額は減少する。
これを意味するのが、この目標売上額の算式です。
現場の達成度合いがリアルに把握できる指標は労働生産性
自活経営として重要な指標は、労働生産性です。
働き方改革が叫ばれる中で、生産性向上ということが絶えず言われていますが、その一つが労働生産性です。
しかし、この労働生産性をどうやって、どれくらいの数字を目標値化するのが妥当なのかで
悩むケースがあります。
これは、会社のこれまでの実績によって異なります。
そこで、少なくとも過去3期分のデータをそろえてください。
そして自社の労働生産性がどんな推移をしているのかを把握し、トレンドの延長線上に目標値を置くことです。
労働生産性の一般的な目標値ですが、業種によって前後しますがこれまでの経験値で言いますと、
中小企業の場合は最低でも1,000万円は黒字化には必要です。
1,200万円あれば余裕の経営が実現します。
中堅企業の場合は、1,500万円、大手企業になりますと1,800万円から2,000万円を目指してください。
企業規模が大きくなればなるほど、間接人員が多くなりますので、労働生産性の目標数字があがってきます。
目標粗利率の設定においても同様のことが言えますが、
来期に画期的な高粗利製品が市場に投入されるなどの与件がある場合は、
その投入される高粗利製品の予想売上構成比などから目標粗利を設定すべきです。
次は設定された部門の売上目標を部署への割り振り、各部署に割り振られた売上目標を
各営業担当者に割り振る方法をお伝えします。
寄与率という指標を理解する
成長寄与率という指標をご存知でしょうか。
この指標は全体の成長の中で、どの商品が全体の成長に貢献したかを示す際に使用されます。
この指標がよく使われるのは、数字で表すことが出来るからです。
ですから算式があります。
この表の事例で言えば、売上は全体として2.6%伸びており、この2.6%の伸びに一番貢献した商品は、
成長寄与率が14.6%と最大であった豚どんであったということです。
一方、一番足を引っ張ったのが△23.5%であった牛どんということです。
この指標は何も商品だけに使われるものではありません。
商品のところを部署や営業担当者に書き換えても同じことが言えます。
会社の売上の伸びに一番貢献したのはどの部署か、どの営業担当者か。
例えばまだ新しい部署で2年目の部署Aがあったとしましょう。
まだ2年目ですから、売上の絶対額は少ないです。
ですので、前期の売上高構成比は低いということになります。
しかし、まだまだ伸びしろのある新設部署ですから、売上高増加率は高いということになります。
つまり上記算式の売上高増加率は高いが、前期売上高構成比は低いという結果です。
一方、会社設立以来存在するような歴史のある部署Bの場合、これまでの積み重ねがありますから
前期の売上構成比は高い状態です。
一方、売上高増加率は、市場において取れるだけとっている可能性がありますので、
低いことが考えられます。
つまり、上記算式の売上高増加率は低いが、前期売上高構成比は高いということです。
ではA部署とB部署を成長寄与率という指標で比較しましょう。
実際の数字がないので、どちらの数値が高いかどうかはわかりませんが、
新設部署と歴史のある部署であっても同じ土俵で貢献度合いを比較できる指標であるということです。
これが部署ではなく、営業担当者であっても同じです。
20年のベテラン営業と2年目の若手営業であっても同じ土俵で評価できるのがこの指標の特徴です。
部門目標を部署に売上高を割り振る方法
では、ここからが本題です。
どうして成長寄与率の説明をしたかといいますと、この指標を活用して営業部門全体の売上目標を
各部署に振り分ける際に意味付けができるからです。
例えば、営業部門全体で前年対比6%の売上アップ目標が確定したとしましょう。
この営業部門は5つの営業所があります。
実際は、いろいろな要件を考慮しますが、わかりやすいように成長寄与率を均等に分けたとして
6%÷5営業所で各営業所の成長寄与率を1.2%としたとします。
成長寄与率 = 売上高増加率 × 前期売上高構成比
でしたから、今各営業所の成長寄与率が1.2%ということになっていますので、この数字を代入します。
前期売上高構成比は、既に計算できますので成長寄与率を前期売上構成比で割り込めば
必要な売上増加率が計算されます。(① ②)
必要な売上増加率が算出できれば、前期実績にその数字をかけ合わせれば、売上目標が導き出せます。(③)
実際には成長寄与率がどの営業所とも同じということはありませんが、
成長寄与率が同じならば売上目標額の増加額も同じになります。
部署目標を営業担当者に割り振る方法
この各営業所に割り振られた売上目標を今度は各営業担当者に割り振る際も同様です。
ここまでの手法で何を申し上げたいかといいますと、
ただ単に「この目標をクリアするよう頑張りなさい」ではなく、
売上目標における連鎖背景を数字で示してあげないと、
営業担当者のモチベーションがあがるどころか、むしろダウンになってしまうということです。
自分の部署は会社全体の成長に対してどれくらい貢献できるのか、
営業担当者である自分自身の貢献度は、そしてどれくらい期待されているのかを理解するのです。
ですから、一つの理論に基づいた部門目標、部署目標、営業担当者目標の設定が重要なのです。
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有限会社アクチャーコンサルティング 代表取締役
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