2023.06.13
2営業プロセスの設定で営業活動を見える化する
営業はとにかく“ガンバレ”という言葉に踊らされます。しかし何をどう頑張れば良いのかが明らかではありません。このブラックボックスになっている営業活動の中味を見える化したものが営業プロセスです。営業力を強化するプロセスの設定法を紹介します。
営業プロセスと営業「質」「量」の関連
営業「質」は何なのかということですが、この「質」ということに意識を
向けている企業が非常に少ないというのが現実です。
営業「量」を増加することだけで、なんとかなってきた時代が長かったからかもしれません。つまり一日の訪問軒数とか営業担当者の人数の増大で結果が伴ってきた時代です。
しかし、「量」のパワーが効くのは、市場拡大の時期だけです。日本で言えば1960年だから70年代にかけての高度経済成長期だけかもしれません。この時代はとにかく「量」を投下すれば、目標達成につながっていたのです。市場の拡大が売上を後押ししてくれていた時代だからです。
しかし、現在の日本の市場は加速度的に縮小しています。しかも、働き方改革のもと労働時間も縮小していくことが確実です。この状況の中で、営業「量」拡大は時代背景から非現実的です。
ですからこれからの組織営業においては、この営業「質」が重要になります。
営業「質」とは、営業担当者のスキルと考えることもできますが、簡潔に表現すると営業「質」とは、
“一訪問の中味を濃くする活動をすること”であり、
強いて言うならば“その訪問の目的を明確にすること”に他なりません。
そこで営業方程式というものをご紹介します。
営業の実績 = 営業「質」 × 営業「量」
です。
つまり、いくら営業「量」を稼いでも「質」が0(ゼロ)ならば、これは掛け算ですから
結果は0(ゼロ)だということです。実績につながらない、目標達成は出来ないということです。
これはある製薬会社さんの事例です。
こういった営業「質」「量」をお伝えするマネジメント研修後に、管理者の方々に調査をしていただきました。
何の調査かといいますと、部下の訪問予定にある訪問先に対して訪問目的が何なのかを確認する調査です。
なんとこの製薬会社さんの場合、訪問軒数に対し、56%の訪問が“予定に入っているので”
という部下からの返答でした。
訪問目的が“予定に入っている”から訪問しているという現実です。
つまり、訪問すること、顔を出すことだけが目的化してしまい、
訪問することが営業活動にすり替わっていたということです。
先ほどの「質」がゼロの訪問が56%あったということです。
これでは、何のための営業活動なのか全くわかりません。時間つぶしの訪問でしかありません。
もうお分かりのとおり、非常に基本的なことではありますが、営業組織が結果を残そうと思いますと、
会社、営業組織全体の方針である「戦略」を構築し、その「戦略」に則って営業「質」と「量」を
高めるだけで短期間に成果を出すことが出来ます。これは、組織営業の根幹です。目標達成への近道です。
営業プロセスで営業活動を標準化する
営業はとにかく“ガンバレ”という言葉に踊らされます。
特に成績が振るわない営業に対して“ガンバレ”としかいいません。
そして「気合が足りん、根性が足りん、執着がなさすぎる」と旧KKD的な叱咤激励を受け続けています。
特に現代の若手社員には、論理性のない叱咤激励は反感を買うばかりか、パワハラとしか受け止められません。
営業担当者からすると何をどう頑張るのか???なわけです。
なぜこうなるのでしょうか?
営業担当者は具体的に何をどう頑張ればいいのかを知りたいのです。
自分には営業上のどんな課題があり、受注に向けて営業活動のどの部分をどう改善すれば結果につながるのかが
分からないまま日々行動しているのです。
しかし、誰もそこまでの指導をしてくれません。
一方マネジメントする側も、各案件のクロージングに向けて、部下のどんな行動管理が必要で、
効果的な部下育成のポイントを把握せずにいます。
その最大原因は、営業組織として自社の営業活動を設定出来ていないことにあります。
組織営業における営業活動の設定とは、自社の営業活動にはどんなステップがあって、
各案件の入り口は何をするステップで、その案件の営業活動の終着は何をするのかという
営業活動の全体像です。
先述の営業「質」とも関連してきますが、重要なところですので
図で説明します。
業界によって異なりますが、大きな流れで言いますと一般的な商談の内容は、
人間関係構築 → 現状把握 → ニーズ把握
→ 提案 → 契約
といった流れになります。
つまり、営業というのは一足飛びに契約にたどり着けるわけでもなく、契約・成約に至るまでには
必ずはずしてはいけない階段、ステップというものがあります。
この階段、ステップのことを営業プロセスといいますが、これが営業組織共通の活動として設定されているか?
ということです。
つまり営業は、この営業プロセスをスピーディーに、かつ確実に登っていくことで、
効率よく結果を出せるわけです。
この営業プロセスの設定が営業活動の設計のベースになります。
しかしながら、この営業プロセスの設定が出来ている企業はほとんどありません。
ですから営業担当者は何をどう頑張ればいいのかがわからないままスピンアウトしてしまうのです。
上記のような営業プロセスが設定されますと、
各プロセスを確実に登っていくために必要なスキルが明確になります。
例えば、最初の“人間関係構築”というプロセスを確実にしていくためには
どんなスキルが必要か書き出せるでしょうか。
・会話に繋げる挨拶のスキル
・自社紹介・自己紹介をしながら、お客様の会社状況や窓口担当の方の個人的な情報を収集するスキル
・共通点を見出すスキル
書き出すときりがありませんが、これは営業プロセスという訪問目的が明確になっているからこそ
必要なスキルとしてあぶりだされたのです。
営業プロセスがあるから、営業は何を頑張るべきなのか、
自分には何のスキルが不足しているのかが明確になるのです。
ですから営業活動の設定は、組織営業の活力になります。スキルアップにつながります。
営業「質」とは、“一訪問の中味を濃くする活動をすること”であり、
強いて言うならば“その訪問の目的を明確にすること”
と以前にお伝えしました。
訪問目的を明確にすることで一訪問の中味が濃くなれば、当然のことながら営業効率も上がります。
営業プロセスとサイクル
では、“その訪問の目的を明確にすること”とはどういうことなのか?
ここに掲載しています
人間関係構築 → 現状把握 → ニーズ把握 → 提案 → 契約
の各プロセスが訪問目的そのものなのです。
「今日このお客様のところに何をしに行くの?」
ということです。
新規顧客の初回訪問ならば、当然のことながら人間関係構築が訪問目的になります。
なぜこの訪問目的が重要かといいますと、通常訪問目的が明確になれば、
その訪問目的を達成するために事前準備をします。
事前準備を入念に行うから訪問目的が達成できるのです。
この場合のように、人間関係構築が訪問目的ならば事前準備として
・訪問企業のホームページを閲覧して事業内容や組織概要、理念・社是の確認
・会話のシナリオ
・質問シナリオ
・自社紹介、自己紹介リハーサル
といった下準備をするはずです。
また、訪問目的が提案ならば事前準備として
・提案書の作成
・プレゼンテーションのリハーサル、ロープレ
といったことを行うのは当然のことです。
これは、訪問目的が明確になっているがゆえに行われることです。
そして、事前準備をしっかりするから訪問目的が達成でき、
しかもスピーディーに営業プロセスを駆け上がることが出来るのです。
この事前準備のことをBefore営業といいます。
訪問して現場で実際に行う営業活動をOn営業といいます。
そして、会社に戻ってきてから行う活動をAfter営業といいます。
この頭文字を取ってBOAといいますが、このBOA活動を営業サイクルといいます。
つまり営業プロセスごとに、“事前にやること”・“行ってやること”・“帰ってからやること”を定型化するということです。
ですから一訪問の中味が濃くなり、訪問目的が達成でき、次のプロセスへの準備ができ、スピーディーに成約までのプロセスを駆け上がる営業活動が実現するわけです。
実はトップ営業の多くは書面にしているかどうかは別として、営業プロセスごとに自身が行うべき行動を定型化しています。
つまり営業は科学です。サイエンスです。ですから再現性があります。
ここまでの営業プロセスの設定が出来れば、営業担当者自身が受注に向けて自主的にやらなければならないことを把握し、
自己の成長度合いも確認できるようになります。
そして、マネジメントする側も誰がどのプロセスで滞留が多いのかをデータから把握し、そのデータを活用して
滞留している苦手なプロセスに集中して指導すれば、組織全体の営業力の底上げになります。
この営業プロセスと営業サイクルが、確実に営業力を向上させ、営業の生産性を高める方法です。
ですから営業活動の根幹をなす営業プロセスの設定を怠ってはいけません。
これは、営業担当者個人が設定するのではなく、営業幹部が主体となり、
営業組織全体の活動として設定する必要があります。
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有限会社アクチャーコンサルティング 代表取締役
BtoBビジネスにおける営業目標を恒常的に達成する『仕組み』構築の専門家。これまでコンサルティング指導先として約320社、受講後アンケートの結果次第では再登壇が困難と言われている企業研修講師・銀行シンクタンクのセミナー講師では、2005年以来連続で登壇するなど約1200件の指導実績がある。
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